学生の頃に、とある大学の商学部に在籍していました。ビジネスのこと、経済のこと、法律のこと等がとても「面白い」と感じ、楽しく学んでいました。社会人になってからも、重めの経済書や、海外の論文なんかを楽しみながら読んでいます(変わっていますね (^^; 、奥さんからもそう言われます)
そんな私の一つの夢は、今は幼い娘たちが社会人になるような頃に、私が大好きな商学/経済学の魅力をちょっとだけ感じてもらうことです。まあ、たぶん、その夢は叶わないとも感じていますが(笑) お友達とのおしゃべり、彼氏君とのデート、楽しい映画や好きな音楽、そんな中に「経済」が入るイメージが持てないですね。
でも、そんな夢に向けて、今の世の中で起こっている商学や経済学に関係することを、未来の娘たちに語るような感じで説明していこうと思います。難しい言葉はなるべく使わず、そして、「へぇ~、ちょっと面白いかも」なんて思ってくれるような内容になるように、お父さん頑張っていきますね。
前置きが長くなりました。では、今回の話を始めますね。
「中国恒大集団の経営不安 」についてです。
目次
・はじめに
・そもそも中国恒大集団って何者?
・なんで急に問題になったの?
・では、今後どうなりそう?
・もう一歩脱線して
・おわりに
はじめに
最近、中国の不動産業界が揺れていますね。中国不動産大手の中国恒大集団が経営不安に陥っていて、膨大な負債を約束通り返済できるのか、不動産開発の未払い代金をちゃんと払えるのか、などについて多くの方が不安を感じています。
この課題、実は古くて新しい課題なんです。
ちょっぴり小難しい内容ですが、なるべく分かりやすく、そして「楽しく」ご説明できたらと思います。お時間ある時にどうぞ。
「よくわかる中国恒大 4つのポイント」の英文記事をNikkei Asia @NikkeiAsia に掲載しています。
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) September 22, 2021
▶️ Evergrande on brink of collapse: 4 things to knowhttps://t.co/3Y9Kx9xSrQ#Evergrande #中国恒大集団
そもそも 中国恒大集団 って何者?
1996年に中国南部の広東省広州市で創業した不動産会社です。日経新聞によれば、2020年12月期の売上高は5072億元(約8兆6000億円)にのぼり、物件販売面積は中国2位だったそうです。「広州FC」というサッカークラブを有しているので、日本ではそちらの方が有名かもしれませんね。英語の名称は「China Evergrande / エバーグランデ」と言います。
巨額の借入によって大きな成長を続けてきた企業ですが、新型コロナによる不動産販売の落ち込みに加えて、中国当局の債務抑制策(三道紅線:3つのレッドライン レバレッジに関する指針です。総資産に対する負債の比率が70%以下、自己資本に対する負債比率が100%以下、短期負債を上回る現金を保有していること)によってこの借入戦略が封じられたことで、一気に経営が傾いてしまい、今のように厳しい状況に置かれています。
(少しくだけた表現をすると、たくさんお金を借りながら自転車操業を続けていたのに、いきなりNGと言われて困っちゃったんです。)
でも、実はこの状況は少し想定されていたことです。中国の不動産市場が少し加熱気味であったことは当たり前ですし、この企業が債務によって急成長しているものの自転車操業であったことも知られていました。そして、中国政府が人々の支持を得るために格差是正や不動産価格の抑制を進めていることも知られていました。
では、なんで急に問題になったの?
中国恒大デフォルト懸念広がる、影響の大きさなお不透明 https://t.co/NXtN9B0UKc pic.twitter.com/d9ph7QSsta
— ロイター ビジネス (@ReutersJapanBiz) September 21, 2021
なんで急に問題になったの?
なんで急に問題になったの?
今まであまり問題にならなかった理由は「中国政府がなんだかんだ言っても助けるんでしょ」という安心感があったためです。
ただ、ここが急に怪しくなりました。上で説明した当局が債務抑制策を示したこともありますが、インパクトがあったのは、中国共産党傘下の環球時報編集長が16日に「恒大集団はToo big to failの原則に基づく政府による救済を期待すべきではない」と主張したことです。中国政府自体のコメントではないものの、投資していた方やお金を貸している銀行、取引されている企業の方々からすると、結構インパクトのある言葉ですよね。
直近だと23日と29日に債券の利払いが予定されていて、みなさんそこに注目しています。
では、今後どうなりそう?
(投資等のご判断には使用しないでくださいね。)
今のところは、一定の債券整理/再編が近々入りそうとの見解が多めです。一番怖いことは、このショックが波及して、金融システム/信用への不安などにつながることや、不動産市場の暴落などが発生することですが、海外の新聞やアナリストのご意見をざっとみる限り現在のところそのような可能性は少ないだろうという見方が多いようです。
以下のニュースのように、少し安心できるような情報も出ていますが、これから一喜一憂するような時期が続きそうです。
中国恒大の不動産部門、23日の利払い実施へ https://t.co/kmM2TTWqER pic.twitter.com/4OX5pgp5hJ
— ロイター ビジネス (@ReutersJapanBiz) September 22, 2021
但し、中国恒大集団が複雑で広範な事業を展開しているため、約900億ドルの銀行借入や社債といった分かりやすいものだけではなく、取引先への債務なども多いとされていて、その影響の大きさがまだ見極められていないところに不安があります。(最近は日本でも「約33兆円の負債を抱えている」といった紹介をされることが多いですね。)そして、明らかに少し加熱ぎみの中国不動産市場に対してどのような影響を及ぼすのかなども含めて、これからの情報や各種データをしっかりと見ていく必要がありそうです。
中国は日本にとって重要な市場なので、金融面のみでなく、実態経済への影響という点でも、じっくり見ていきたいと思います。(通常、金融で大きな影響が起こると、少し時間差で実際の経済も影響を受けていきます。中国の不動産関連市場は規模も大きいので、そこが不調になると影響も大きそうですね。さすがにそうなると中国政府が介入すると思いますが、危険な債務に頼って富を蓄えていた人を助けるようなイメージを与えてしまうことにもなりかねず、ちょっと扱いが難しい問題です…)
もう一歩脱線して
ここからは少しマニアックな内容です(笑)
今までは一つの企業のみを見てきましたが、少し視点を引いて今回の出来事を眺めてみますね。
今、世界が抱えている不安/課題、それは「債務の多さ」です。IIF (Institute of international finance国際金融協会)が2021/9/14に発表したレポートによれば、世界の負債は約300兆ドル($296Trillion)に迫る勢いで増加しています。これは世界のGDPの約350%と、なかなかの大きさです。(この前の期は、GDP割合がもっと高かったものの、少し割合が減ってはいますが、依然として大きい状況です)
コロナによって、各国が金融緩和を行い借入しやすい環境が出来上がり、政府が各種支援のために負債を抱えたことなどがありました。この負債が大きくなり過ぎつつある状況の気持ち悪さが、今回の中国における不動産市場での同様といった形で現れていると見ることもできますね。
画像出典元:IIF
色々な考えや意見があり、すぐに金融危機が来るものではないとされていますが、じっくりと各種データを見ていく必要はありますね。
おわりに
最近のニュースが少し身近に、そして、ちょっぴり「面白い」と感じていただけたら嬉しいです。
今回も長くなりすぎました (^^;
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
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