学生の頃に、とある大学の商学部に在籍していました。ビジネスのこと、経済のこと、法律のこと等がとても「面白い」と感じ、楽しく学んでいました。社会人になってからも、重めの経済書や、海外の論文なんかを楽しみながら読んでいます(変わっていますね (^^; 、奥さんからもそう言われます)

そんな私の一つの夢は、今は幼い娘たちが社会人になるような頃に、私が大好きな商学/経済学の魅力をちょっとだけ感じてもらうことです。まあ、たぶん、その夢は叶わないとも感じていますが(笑) お友達とのおしゃべり、彼氏君とのデート、楽しい映画や好きな音楽、そんな中に「経済」が入るイメージが持てないですね。

でも、そんな夢に向けて、今の世の中で起こっている商学や経済学に関係することを、未来の娘たちに語るような感じで説明していこうと思います。難しい言葉はなるべく使わず、そして、「へぇ~、ちょっと面白いかも」なんて思ってくれるような内容になるように、お父さん頑張っていきますね。

 

前置きが長くなりました。では、今回の話を始めますね。
Yahoo Financeでサッと行う企業分析」についてです。

目次

 

・はじめに

・Yahoo Financeの見方

-最初に見るべきポイント

-「 Summary 」の見方

-「 Statistics 」の見方

 

・おわりに

はじめに

「これから伸びる企業はどこ?」「倒産しそうな企業は?」
就職活動や資産運用などで欠かすことのできない「企業分析」、そのための便利で無料なツール「 米国 Yahoo Finance 」の使い方♬

 

企業分析を行う時には、日本の企業の場合は有価証券報告書や四半期報告書、米国企業の場合はForm 10K10Qといった報告書を見ていくことになりますが、少し時間がかかります。さっと見たい時に便利で、しかも無料で使えるオススメのシステムが「 米国 Yahoo finance 」です。主な使い方を雑談を交えながらご紹介します。

 

(ここからは、なるべく分かりやすく書いていきますが、少しだけ簿記等の知識がある方に話すような感覚で進めていきますね。営業利益や時価総額といった単語は知ってるよ、という皆様をイメージしています。私の娘はもちろん知りませんので、タイトルの趣旨から離れてしまいますが (^^; 

 

また、株式投資のための見方ではなく、企業分析のための見方を中心にご紹介します。経営状況に関する情報の見方が中心で、例えば52週の株価平均といった情報や株価のテクニカル分析等は、今回はあまり対象としていませんので、ご了承ください。)

最初に見るべきポイント

・米国Yahoo financeのトップページへ

日本のヤフーでも金融ページはありますが、機能は米国の方が進んでいますので、今回は米国版の使い方をご紹介しますね。

 

https://finance.yahoo.com

 

一番上の検索バーに、企業名やシンボル(iPhoneで有名なアップルの「AAPL」などです)を入れると、個別の詳細を見ることができます。

ちなみに、米国Yahoo financeでは、なんと日本企業の分析も可能です。企業名か日本の証券コードを検索バーに入れれば、しっかりと出てきます。便利ですね♫

 

 

ここからは、例として主にアップルやソニーを見ていきます
(以降の画像出典元はYahoo finance のアップル関連ページ、2020/10/8及び10/9の閲覧内容です。https://finance.yahoo.com/quote/AAPL?p=AAPL )

まず、何を見ればいいの?

まず最初に見るべき箇所は一番最初に出てくるページである「 Summary 」、そして次に企業の状況を客観的に知ることが可能な「 Statistics 」、最後に各種財務諸表が一覧できる「 Financials 」を見れば、経営がうまく行っているのか、倒産するようなリスクはあるのか、といった企業の状況が大体分かるようになっています。

 

他には上の図のように、過去の株価データ(historical data)、企業概要(profile)、株主構成(holders)など、多くの情報を確認することができます。

 

今回はとても便利なSummaryとStatisticsについて、順にご説明します♬

(「Financials」もとても役に立つのですが、重要な数値は今回紹介するStatisticsにも出てきます。もう少し見たくなると、やはりFinancialsを見たくなるのですが、少し専門的な面があるため今回は扱わず、いつか別途ご紹介しますね。)

「 summary 」の見方

ここには、上場先、記載通貨、現在の株価・チャート等が記載されています。

 

 

・上場先など

Apple(AAPL)の場合は「NasdaqGS Real Time Price. Currency in USD」と記載されていますので、「Nasdaqに上場している米ドルでの株価」ということがわかります。real timeという箇所は「遅れなく株価情報が反映されますよ」という意味です。

 

 

たとえば日本の会社としてSONYを見てみる場合は、日本の証券コード「6758.T」と検索バーに入れ検索すると、summaryトップに「Sony Corporation Tokyo Delayed Price. Currency in JPY」との記載が出てきます。「東京証券取引所に上場している日本円での株価」ということが分かります。delayed price とあるので「少し遅れた株価情報です」とのメッセージです。

 

 

・株価

そのすぐ下には株価チャートが載っています。

(ちなみに、例として使用しているアップルですが、株価はこのように、ここ10年程でものすごく上昇しています日本の大企業で、これほどすごい上昇となっている企業はありません。アップル、すごいですね。)

画像出典元は上述の通りYahoo Finance公式サイトのApple関連箇所です。最新情報も、同社サイトをご覧くださいね。

株価を見ると、投資家の皆様の期待が見えてきます。こちらが急激に下がっていたりすると、業績に不安を感じている人が多いと言えますね。なぜ下がっているのか、もしくは今回のアップルのようになぜ上がっているのか、といった疑問と共に下の「statistics」等を詳しく見ていくと、その背景が少しずつ見えてきます。

 

 

(summaryにもいくつか数字が載っていますが、今回は次のstatisticsで見ていくため、サラッと眺める程度で問題ありません。)

「 Statistics 」の見方

このページをザッと見ることで、利益をしっかり出せているか借金が多すぎることはないか投資家が期待しているか、などが分かってしまいます。少し細かな点も含めながら、ご紹介していきますね。

 

 

・まず初めに、全体的な見方について

慣れると読みやすくなるのですが、けっこう略称が使われているので、最初はとっつきにくいかと思います。

まず初めに、多くの項目に記載されている時期に関する略称をご紹介しますね。ここが分かると、大分読みやすくなってきます♫

 

 

・対象期間

様々な経営成績がありますが、どの時期を対象とするかで数字がガラッと変わってしまいます。

 

その企業の「今」の実力を知りたい時は、一番最近の四半期決算情報や、年間の決算情報を見たくなります。ただ、年間決算は一年に一回しか出されないので、時期によっては少し古い情報になってしまうため、直近の4つの四半期決算を合計する見方もあります。

 

そのような見方の略称がこちらです。

 

mrq
Most Recent Quarter:直近四半期

 

ttm
Trailing Twelve Months:直近12ヵ月

 

lfy
Last Fiscal Year:前事業年度

 

 

例えば、企業が保有する現金の総量などを見たい時には、常に変動しているという特徴から、ある一瞬を切り取って数値化します。

そんな瞬間を示す略称がこちらです。

 

fye
Fiscal Year Ending:事業年度末

 

 

・比較対象

数字を見るときは、数字そのものを見てもなかなか判断がつきません。まずは「過去と比較する」「同業他社と比較する」ことで、少しずつその数字の意味合いが見えてきます。

 

過去と比較する時には、まずはこちらです。

 

yoy
Year Over Year:前年比

 

その上で、5年前との比較や、最近だと新型コロナ前との比較などを行っていくと、今の実力が見えてきます

 

「 Statistics 」の見方 

詳細:Valuation Measures 評価指標について

Statisticsの中で企業分析に便利な箇所が、Statisticsのトップに記載されている「Valuation Measures 評価指標」です。少し細かく、言葉の意味を含めて紹介を進めていきますね。

 

 

Market Cap (intraday)
時価総額です。Appleの場合は約2兆ドル(約200兆円)程の価値となっています。日本を代表する企業の一つであるソニーは約10兆円(¥9.64T)ですので、Appleの時価総額はソニー20社分と同じと言えます。とんでもないですね (^^;

 

Enterprise Value
企業価値

(少しとっつきにくい言葉ですよね。「EV(Enterprise Value)/EBTIDA」という少し面白い指標がありますので、後半でまとめてご紹介しますね。)

 

 

Trailing P/E (ttm)
実績PER (直近12ヵ月)です。

PERとはPrice Earnings Ratioの略で、株価が1株あたりの当期純利益の何倍になっているかを示しています。高過ぎると、利益と比べて株価が高いため、将来グッと利益が上がると考えている投資家が多いことが分かります。(株価が高すぎる場合もあります。)

 

 

Forward P/E
予想PERです。

 

 

PEG Ratio (5 yr expected)
PEGレシオ(5年予測)

 

Price/Earnings to Growth ratio、予想PERを一株あたり利益(EPS)の予想成長率で割って算定します。2倍や3倍以上になると少し割高とされます。

 

 

Price/Sales (ttm)
株価売上高倍率(直近12ヵ月)

 

 

Price/Book (mrq)
PBR(直近四半期)

 

PBRはPrice Book-value Ratioの略で、株価が直前の決算期末の1株あたり純資産の何倍になっているかを示しています。純資産とは、仮に会社が活動を止めて資産を分けた場合に株主に分配される資産を意味しています。そのため、解散価値とも言われています。(日本の企業は、この価値が1を下回る企業が多いことが特徴です。)

 

 

Enterprise Value/Revenue (ttm)
企業価値/収益(直近12ヵ月) 

Enterprise Value/EBITDA (ttm)
企業価値/EBITDA(※:金利・税金・償却前利益)比率(直近12ヵ月)

 

「Enterprise Value:EV」とは、「株式の時価総額+有利子負債額-現預金」です。
これは「この会社を買うといくらかかるのか」ということを表す式とされています。

まずは、「株式の時価総額(株価x株式数)」分のお金が必要です。そして会社を買うとその会社の「借金(負債)」がついてきます。一方で、今会社にある「現預金」も自分のものになりますね。その分を差し引きした数字なんです。

 

 

そして、この「Enterprise Value/EBITDA倍率(企業価値・EBITDA倍率)」とは、「この会社を買ったら、何年で元がとれるの?」という指標です。

 

その会社を買うとかかる金額Enterprise Valueを、EBITDAという現金を稼ぐ力を示す利益の指標で割ったものです。

 

10/9時点で、Appleは25.39でしたので「元をとるまで約25年かかる」となります。同じ日にSONYは9.61なので「約9年半かかる」となりますね。

 

(昔私が学んでいたときには7-8倍が目安とされていましたが、それと比較すると今のAppleはかなり高いです。つまり「今の利益で見れば割高だけど、将来もっと利益が増えるので適正だ」と考えている方が多いことを意味しています。すごいですね。)

 

 

 

ちょっと長いですね(笑)この後は、少し駆け足でポイントのみご紹介していきます。

(投資家向け情報 Trading informationの「stock price history」「share statistics」「dividends & splits」なども記載されていますが、今回はこれらには触れません。この次のFinancial Highlightsが企業分析には便利ですので、今回はまずはこちらの見方をご紹介します。)

「 Statistics 」の見方

詳細:Financial Highlights について

・Fiscal Year 会計年度

Fiscal Year Ends: 会計年度末

Most Recent Quarter (mrq): 直近四半期

 

この情報によって、いつ時点の経営成績に関する情報かを把握することができます。

(特に、今回の新型コロナのような突発的な影響を見るためにも、数字の時期が分かりやすく載っていることが重要です。)

 

 

・Profitability  収益性

Profit Margin (ttm)
売上高純利益率(直近12ヵ月

Operating Margin (ttm)
売上高営業利益率(直近12ヵ月)

 

その企業の利益体質を把握することができます。この2つの違いは純利益・営業利益のどちらを対象としているかです。純利益には企業活動に直接的には関係しない投資活動や配当なども含まれるため、株主にとっての最終利益を把握することができます。一方、営業利益だと、その企業の営業活動に関係する利益となりますので、事業活動自体の利益体質を見ることができます。

 

どちらか片方ではなく、どちらも見ると、その企業の姿が見えてきます♬

(例えば、営業活動からの利益はさっぱりなのに、純利益が大きいと、その他の収益で穴埋めしているようなことが見えてきます。)

 

 

Management Effectiveness 経営の有効性

Return on Assets (ttm): ROA(直近12ヵ月)

Return on Equity (ttm): ROE(直近12ヵ月)

 

当期純利益(Return)を総資産(Assets)で割ったものか、自己資本(Equity)で割ったものかという違いです。

自己資本とは貸借対照表の純資産のことで、株主から調達した資金や利益の留保額など、株主に帰属する資本です。(負債のことを「他人資本」とも言いますね。こちらは「他人」に返さなくてはならない資本だからです。)

 

ちなみに、海外の企業では自己資本がマイナスであり、ROEを算出することの意味がないこともあります。銀行等から借入を行い、株主還元を厚くしている企業が、その傾向が強いようにも感じます。(それでも、借りたお金を元にしっかりと利益を稼ぎ、株主にも銀行等の債権者にもお金を渡し続けられていれば、特に問題はないとの考え方もあるため、国によっては自己資本がマイナスでも大きな問題とされないこともあります。個人的にはちょっとリスクが高いように感じはしますが(^^; )

 

 

Income Statement 損益計算書

Revenue (ttm)
売上高(直近12ヵ月)

 

Revenue Per Share (ttm)
一株当たり売上高(直近12ヵ月)

 

Quarterly Revenue Growth (yoy)
四半期売上高成長率(前年比)

 

Gross Profit (ttm)
売上総利益(直近12ヵ月)

 

EBITDA (ttm)
現金を稼ぐ力を示す利益指標です。金利・税金・償却前利益。(直近12ヵ月)

 

Net Income Avi to Common (ttm)
普通株の株主に帰属する純利益(直近12ヵ月)(Avi = Available)

 

Diluted EPS (ttm)
希薄化一株あたり利益(直近12ヵ月)

 

Quarterly Earnings Growth (yoy)
四半期利益成長率(前年比)

 

 

Balance Sheet 貸借対照表

Total Cash (mrq)
現預金, 現金同等物(直近四半期) 

ちなみにAppleのTotalCashは$93.03Bですので、約10兆円の現金を有していることが分かります。ほぼ国家予算並ですね(笑)

 

Total Cash Per Share (mrq)
一株当たり現預金(直近四半期)

 

Total Debt (mrq)
有利子負債合計(直近四半期)

 

ちなみに、AppleのTotal Debtは$122.19Bですので、約12兆円もの借金を抱えています。ただ、先ほど上で見た通り、現金も10兆円も有しているため、実質的な借金は2兆円くらいです。EBITDAが$78.67B、年間の純利益が$58.42Bと、1年間でざっくりと5−10兆円も利益を出しているため、2兆円の借金は調整の範囲内であることが分かりますね。

 

 

Total Debt/Equity (mrq)
負債・資本比率(直近四半期)

 

Current Ratio (mrq)
流動比率(直近四半期)

 

Book Value Per Share (mrq)
一株当たり簿価(直近四半期)

 

 

損益計算書上の利益は、実は帳簿上の利益でしかなく、黒字で利益が出ていても資金繰りで失敗すれば倒産してしまいます。そこで見るべきは現金の流れ/Cash Flowです。Statisticsの欄には、その中でも重要な2点が記載されています。

 

 

・Cash Flow Statement キャッシュ・フロー計算書

Operating Cash Flow (ttm): 営業活動によるキャッシュ フロー(直近12ヵ月)

Levered Free Cash Flow (ttm): レバード フリー キャッシュ フロー

 

 

少し分かりにくい言葉は、2つ目の「Levered free cash flow」ですよね。これは有利子負債の影響を織り込んだキャッシュフローで、別名は Free Cash Flow to Equity 株主に帰属するFCFです。ざっくりとは、「投資家にとっての現金はどのくらいあるのかな」ということを見たい時に参考とする指標です。

 

(反対はUnlevered FCF、債権者と株主の両方に帰属するキャッシュフローです。FCF to Firmとも言います。)

おわりに

なんか、教科書のようになってしまいました…

ただ、このようなことを頭の片隅に置きながら、各企業の業績を見てみると、例えば 「この企業は実は売上と利益がどんどん減っている…」 「一方、この企業は、巨額赤字になったと報道されていたけれど、意外に財務状態は悪くないぞ。反転攻勢の準備かも」 「この企業、もう倒産寸前かも…」 などなど、いろいろと興味深いことが見えてくるんです。

 

 

少しでも皆様の役に立てる情報がありましたら嬉しいです♬

 

 

長文にも関わらず、最後までお読みくださりありがとうございました。

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