学生の頃に、とある大学の商学部に在籍していました。ビジネスのこと、経済のこと、法律のこと等がとても「面白い」と感じ、楽しく学んでいました。社会人になってからも、重めの経済書や、海外の論文なんかを楽しみながら読んでいます(変わっていますね (^^; 、奥さんからもそう言われます)
そんな私の一つの夢は、今は幼い娘たちが社会人になるような頃に、私が大好きな商学/経済学の魅力をちょっとだけ感じてもらうことです。まあ、たぶん、その夢は叶わないとも感じていますが(笑) お友達とのおしゃべり、彼氏君とのデート、楽しい映画や好きな音楽、そんな中に「経済」が入るイメージが持てないですね。
でも、そんな夢に向けて、今の世の中で起こっている商学や経済学に関係することを、未来の娘たちに語るような感じで説明していこうと思います。難しい言葉はなるべく使わず、そして、「へぇ~、ちょっと面白いかも」なんて思ってくれるような内容になるように、お父さん頑張っていきますね。
前置きが長くなりました。では、今回の話を始めますね。
「~ Covid and beyond ~ BIS の 年次経済報告書 」についてです。
目次
・はじめに:振り返り
・COVID & Beyond:これからどうなる?
BISレポートより
・おわりに
はじめに
COVID-19が始まった頃に、ブログでこんな内容を想定してきました。
・例えばアメリカなどの裕福な国では、COVID−19に対する巨大な支援策によって経済が急回復していく。一方で、インフレリスクが徐々に意識され始める
・十分な支援策を取れない国々(主に新興国)の経済回復は緩やかとなり、経済的な差が広がる
・”イギリスで有名なThe Economistといった雑誌を見る限り、新型コロナウイルスを「消滅」させるようなことは難しく、医療機関がパンクしてしまわない範囲でコロナを薄く拡散させていき、少し厳しいインフルエンザのような状態にもっていくことが、一つの「収束」の姿のようです。ここから見えるのは、新型コロナウイルスの影響はまだもう少し長引くということです。
そうなると、仮にすぐに現金を給付してもらっても、今まで既にお金を払う予定であった生活必需品にお金を使うことになり、本格的にお金を使う量を増やすのはコロナが収束してからとなりそうです。つまり肝心な「需要」が増えるのは、もう少し先となりそうですね。”(2020/4/6)
トンチンカンな想定ではなく、ちょっとは未来を見通せていたので、正直ホッとしています(笑)
でも、特別なことでもなんでもなく、各種経済データを地味に追いかけ続ける、信頼のおける情報をじっくりと見ると、ちょっぴり想定できてしまうものなんです。ただ、外れることももちろんあります(笑)その時は「なんで想定が異なったか」という点について、また地味に地味にデータを見ながら軌道修正していきます。(経済分析って、実はとーっても地味な作業なんです)
前置きが長くなりました(^^;
今回は信頼がおける情報源の一つ 「各国の中央銀行が参加する BIS (Bank for International Settlements、国際決済銀行)」 が最近公表した「年次経済報告書」を紐解いていきますね。(完全にマニアックですね (^^; ただ、結構便利でしかも無料の情報なのでお得です笑)
そもそも「 BIS 」とは?
Bank for International Settlements、国際決済銀行の略称です。
1930年に設立された中央銀行をメンバーとする組織です。(本部はスイスのバーゼル。スイスが金融に強いイメージがありますが、こういう国際機関の本部があるところも、その強さを物語っていますよね。)
原則隔月で開催する中央銀行総裁会議にて、各国の経済・金融の状況や金融政策、国際金融市場の状況などについての意見交換の場を提供しています。
・ちょっと寄り道:名前の「Settlements」の由来
ドイツの第1次大戦賠償支払に関する事務を取り扱っていたことが行名の由来です。
いろいろな国際機関って、実は戦争が起点になってたりしますよね。
・なぜBISが大事なの?
今の経済情勢は各国の中央銀行の金融政策・支援によって成り立っているので、今・そしてこれからの経済状況を見ていくには、世界各国の中央銀行の認識や見通しを見ていくことが近道ですね。そして、このBISは各種レポートを発行していて、多くが無料で閲覧できるんです。
今回は、2021/6/29に公表されたBISの年次経済報告書を見ていきます。
BIS 年次経済報告書 2021
2021/6/29にこちらのレポートが公開されました(118ページもある大作!)
このレポートには「COVID−19の影響や対策の振り返り」「今後の将来シナリオ」「中長期的なリスクや課題」などが記載されています。順に概要をご紹介しますね。( 画像出典元:BISレポート原文https://www.bis.org/publ/arpdf/ar2021e.pdf )
【COVID−19の振り返り】
・各国の支援によって、当初の想定よりも影響が緩和されている
一番左のグラフにある通り、2020/6時点の経済見通しよりも、多くの国でより力強い回復を実現できています。COVID-19発生当初はより悲惨な状況になるといった想定もあったものの、各国の巨大な支援が経済をしっかりと支えたことがデータから見て取れます。一部企業の業績も絶好調ですもんね。
・一方、国ごと・セクターごとに回復の速度が異なる「でこぼこ」な回復
右のグラフはサービス分野の回復の遅れに関する資料です。COVID-19による人々の行動変化が直接的に影響を受けていると、いくら経済支援があっても需要が高まらないことがわかりますね。
COVID-19発生後の一年は「意外に良好、但しセクターや国ごとに回復の傾向が異なる」という結果でした。そして、気になるのは「将来どうなるか?」ですよね。ここについてもBISが触れています。
BIS 年次経済報告書 2021
【今後の将来見通し・シナリオ】
以下、3つのシナリオを提示しています。
・中心的なシナリオ The central scenario
COVID-19が一定程度収束し、需要が拡大していく。物価上昇は進むものの、コントロールできる範囲での推移となる。
但し、新興国ではしっかり回復する国、回復が停滞する国の差がより顕著となる。
各国の中央銀行としても、今の中心的なシナリオは安定的な回復であることがわかります。今の株高や、多くの企業の強気な将来見通しもこのようなシナリオが中心にあるとも言えますね。
ただ、「安心できるか?」となると、そうでもありません。BISは同時に2つの可能性のあるシナリオを提示しています。
・代替シナリオ① Alternative scenario 1
景気の加速が想定以上となる ⇨ インフレが想定以上に加速する ⇨ 金融引締が必要となる、という流れに陥るパターン。
金融環境がガラッと変わるため、金融市場に大きな影響を与えます。例えば米国が急な金融引締に進むと、新興国などはより厳しい状況に陥ることなども想定されます。(経済が加速するため、米国での輸入が増える⇨輸出の増加が見込めるといった効果もあるため、国の産業構造ごとに影響に差が出てきます。このあたりまで見ると、だんだん細かくなっていきます笑)
・代替シナリオ② Alternative scenario 2
景気回復が頓挫し、企業の信用損失が進むパターンです。
パンデミックの不利な方向転換は、このシナリオの明らかな引き金とされています。
このシナリオとなると、2020年は実は各種対策によって著しく少なかった企業の破綻が大幅に増加し始めるとしています。その結果として生じる企業向け貸倒損失は、銀行の財政状態を弱体化させ、銀行の貸出能力を低下させます。
BIS 年次経済報告書 2021
【中長期的なリスクや課題など】
将来を見通す上で、いくつかの指標に注目しています。最後に、BISが注目している主要な項目をご紹介しますね。
・住宅価格
物価の安定に責任をもつ中央銀行の視点で見ているため、資産価格の推移にはとても敏感です。そして今特に注目されているのは、住宅価格です。こちらの資料のように、今右肩上がりで価格が上昇しています。少し気になりますよね。
・他には、各国政府の負債拡大、中央銀行のバランスシートの拡大なども注目していることがわかります。そして、パンデミックの初期に各国企業の借入金が大幅に増加したため、企業は返済義務の増加に対処しなければなりますね。
今後は、この辺りの各種最新データを見ていきながら、シナリオの軌道修正を行なっていくイメージですね。
おわりに
BISの情報、いかがでしたか?
今回ご紹介した内容はレポート全文の内、ごく一部の概要のみですが、けっこう興味深いデータや見通しが記載されていますよね。この資料を見るだけでは足りないものの、これらの考えに他の最新経済データを紐付けながら見ていくことで、結構面白く・納得感のある将来見通しを自分で考えることができてきます♪
と〜っても地味な作業ですが・・・(笑)
今回も長くなりすぎました (^^;
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
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